政府は、備蓄米の流通が遅れた問題を受け、民間企業によるコメの備蓄制度の導入を検討しています。
近年の気候変動や不作リスク、物流のひっ迫などを背景に、これまでの「国主導の備蓄体制」では即応性が十分でないことが課題として浮き彫りになりました。
今後は、民間と官の連携による分散型備蓄・流通モデルの構築が焦点となりそうです。
政府備蓄米の放出に時間 入札・契約手法にも課題
今回の見直しのきっかけとなったのは、2024年3月以降に実施された政府備蓄米の一般競争入札および随意契約による放出です。
これらは緊急的に市場に米を供給する措置でしたが、結果的に消費者の手元に届くまでに時間がかかる事態となりました。
背景には、
- 長期保管による品質劣化や異物混入リスク
- 出荷前の「メッシュチェック」(品質確認)に時間がかかったこと
- 官主導による集中管理体制の柔軟性不足
などが挙げられます。
特に随意契約分には2021〜22年産の古い備蓄米が含まれており、品質確認に手間を要したことが遅延の大きな要因となりました。
民間備蓄の導入で即応性向上を狙う
政府は今回、麦の備蓄制度を参考に、民間企業が一定量のコメを保管し、政府が保管経費を助成する仕組みを検討しています。
この方式であれば、農協(JA)やコメ卸業者など流通現場に近いプレイヤーが在庫を保持するため、需給の変動時に小売・外食産業への迅速な供給が可能になります。
また、備蓄期間(現在5年)や備蓄水準(約100万トン)の見直しも検討中。
現在の基準は2001年当時の年間需要量(約900万トン)をもとに算出されており、直近の需要(約700万トン)を踏まえると、より現実的な備蓄量設定が求められています。
適切な入札・契約方式の選定がカギ
今回の備蓄米放出では、
- 一般競争入札による価格競争の透明性
- 随意契約による迅速性と柔軟性
の両方を使い分けましたが、結果的にどちらも課題を残しました。
価格競争型ではコスト削減が期待できる一方で、手続きや検査が煩雑になりやすく、随意契約ではスピードは出るものの、品質面・透明性の確保が難しいという側面があります。
今回の民間備蓄制度の検討は、こうした「入札方式の最適化」を考える上でも一つの転機といえるでしょう。
単に官から民へ権限を移すのではなく、リスク分散・品質確保・スピード感のバランスをどう取るかが問われます。
運営者所感
今回の報道から見えてくるのは、「入札や契約の形式」だけでは解決できない構造的な課題です。
備蓄米は公共性が高く、コストよりも供給の安定性と品質維持が重視されるべき分野です。
民間が参画することで即応性や柔軟性が増す一方で、品質管理や在庫把握の体制整備が追いつかないと、かえって混乱を招く可能性もあります。
今後は、価格・品質・スピードの3点をバランス良く評価できる“総合評価方式”が重要になりそうです。
単なる制度変更ではなく、実運用まで見据えた入札設計が求められます。

